宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について9

 牛乳屋へ行ったジョバンニですが、年を取った女の人が出てきましたが、店の人ではないらしく、今は誰も居ないから明日にしてほしいというのです。けれど、ジョバンニが病気の母が待っているから、と頭を下げて頼むと、少し経ってから来てくれ、と言ってくれました。お礼を言って、少し時間をつぶす為にジョバンニは向こうの橋へ行こうした時、町の雑貨店の前で、烏瓜を手にした数人の同級生達を見かけたのです。さっきの様な嫌な思いをする、と一度は戻ろうとしますが、ジョバンニは敢えてそちらに向かって歩いていきました。川へ行くの、と言いたかっただけなのですが、それがすんなり出ないと思うと、すかさず同級生達はジョバンニをからかう事を言ったのです。
 その中にカンパネルラの姿を見つけ、彼が気の毒そうな、怒らないかと問う様に自分を見ている事に気付きました。その眼を避けるように、ジョバンニは歩みを進めて、皆が通り過ぎると振り返ってみました。そこには、同級生達と同じ様に口笛を吹くカンパネルラが居て、ジョバンニはさびしくなって、黒い丘の方へ走り出したのです。そこは牧場の後ろにあるゆるい丘で、頂上は黒く平らで、てっぺんまで行くと天の川が南から北へ渡っているのが見えるのです。

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