宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について11

 丘の上で星を眺めていたはずのジョバンニは、その星が姿を変えて、野原に真っ直ぐ立ったかと思えば、どこからか、銀河ステーション、銀河ステーションという不思議な声が聞こえてきたのです。すると、いきなり目の前が明るくなって、気が付くとジョバンニはごとごとと走る列車に乗っていたのです。小さな黄色い電燈の並んだ、青いビロードを張った腰掛けががら空きの車室で、窓から外を見ながら座っていたジョバンニは、すぐ前の席に真っ黒な上着を着た、背の高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気付きました。その子供の肩の辺りに見覚えがある様な気がして、顔が見たくなり、ジョバンニは自分も窓から顔を出そうとしました。ですが、その前に子供が頭を引っ込めて、こっちを見たのです、それがカンパネルラだったのです。
 ジョバンニは何時からいたのか聞こうとしましたが、その前にカンパネルラが他のみんなは走って来たけれど遅れてしまった、ザネリも随分と走ったけれど追いつかなかった、と言ったのです。そこで、ジョバンニは自分達が一緒に誘って出かけたのだ、と思ったのです。なら、どこかで降りて皆を待っていようか、と言いますが、カンパネルラは少し青ざめた、どこか苦しそうな顔色でザネリは父親が迎えに来たから帰ったよ、と言いました。

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