宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について12

 いつの間にか銀河を走る不思議な汽車に乗っていたジョバンニと、目の前の座席に、少し顔色が悪そうな様子で座っていたカンパネルラ。けれど、カンパネルラは窓から外を見ていると、元気になった様で水筒やスケッチ帳を忘れてきたけれど、もうすぐ白鳥の停車場につくから構わない、と勢いよく言うのです。そして、銀河ステーションで貰ったという黒曜石で出た立派な地図をまわして見ていました、ジョバンニはどの地図をどこかで見た気がしましたが、地図に書かれている白鳥の停車場や自分が乗っている汽車や窓の外の景色が気になったのです。その汽車は天の川の水の中を走っていて、最初は気付かないのですが、目を凝らすとガラスや水素より透き通っていて、それが美しい光を放ち、幻想的な風景となってジョバンニをどきどきさせました。
 そこで、ジョバンニは汽車が煙を出していないことに気付き、カンパネルラはアルコールか電気で走っているのだろう、と言いました。すると、どこか遠くの方から、この汽車はうごくようにきまっているからうごいている、本当はごとごとと音すらしていないが、そう聞こえる気は2人が音をたてる汽車になれているからだ、と何度も聞いた覚えがある様な声がしたのです。

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