宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について15

 少しの間だけ汽車を降り、再び席に着いたジョバンニとカンパネルラの前に、声を掛けてきた大人がいました。その日とは茶色の外套を着て、白い布切れで包んだ荷物を二つに分けて、肩にかけた赤ひげで背を曲げた人でした。2人に声を掛け、その人はゆっくり網棚に荷物を乗せました、ジョバンニは何か寂しい様なきがして、黙って正面の時計を見ていました。やがて、ガラスの笛の様なものが鳴り、その頃には汽車は静かに動いていたのです。カムパネルラは車室の天井をあちこち見ており、赤ひげの人は2人をみて懐かしそうに見ていました。汽車は徐々に速度を上げて、窓の外は再び光りました。そんな中で、赤ひげの人が2人に何処へ行くのかと聞いてきたのです。
 気付いたら汽車に乗っていたので、ジョバンニが「どこまでも」と少しきまり悪そうに答えると、赤ひげの人は「この汽車、どこまでも行きますぜ」と返し、カムパネルラはケンカの様に「あなたはどこへ行くんですか」と聞くので、ジョバンニは思わず笑ってしまいました。
 すると向こうの席にいた、とがった帽子をかぶり、大きな鍵を腰に下げた人も笑っていたのです。思わず声を出したことに気付いたカムパネルラも、つい顔を赤くして、笑いただしてしまいました。

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