宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について16

 行き先を聞かれ、なぜか怒った様に聞き返したカンパネルラに、彼自身も笑ってしまい、それに気付いて赤くなってしまったのですが、相手は気分を悪くした様子もなく、自分はすぐに降りるというのです。その人は鳥を捕まえる商売をしているといい、こんな場所に鳥がいるのかと不思議がる2人に、耳をすませれば水が沸くような音がすること、鷺は天の川の砂がかたまった場所へ行って、簡単に捕まえられること、そして捕まえた鳥は押し葉の様に平たくする、と言うのです。更に、それは標本にするのではなく、皆が食べる、というのです。平たくした鳥を食べる、と聞いて首をかしげる2人に、男は網棚の包みから捕まえたばかりだという鳥を見せたのです。
 それは本当に鳥の鷺で、それが平たくなって、十ほど並んでいるのです。男、鳥捕りは美味しいから毎日注文があること、雁の方が売れると言い、2人に雁を少し食べさせてくれました。ジョバンニは鳥がチョコレートより美味しいので、これは本物の鳥じゃなくて、精巧に出来たお菓子で、この人はお菓子会社の人で今の話は作り話なんだろう、と思ったのです。カンパネルラも同じ事を思った様で、鳥捕りが燈台守だという人と少し話した後にハッキリと「ただのお菓子でしょう」と聞いたのです。すると、鳥捕りは慌てた様子で、ここで降りないといけない、と荷物を持って行ってしまったのです。

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