宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について19

 自分が銀河鉄道の特別な切符を持っていると知ったジョバンニは、カンパネルラと一緒に、本当にどこまでも行くつもりでした。けれど、途中で一緒になった青年と、青年と一緒に居た姉弟は、サザンクロスで天へ上る為に銀河鉄道を降りなければならないというのです。最初はカンパネルラと仲が良さそうに喋っていた姉の方を少し疎ましく思っていたジョバンニですが、別れの時が来ると悲しくなり、声を上げて泣きそうになりました。その時、天の川の川下に散りばめられた色とりどりの十字架が、まるで一本の木の様に立ち上がって光を放ったのです。その光に合わせるように汽車の中で祈りの声が次々上がり、汽車は十字架の真向かいで止まったのです。ここが、青年や姉弟の降りる「サザンクロス」だったのです、ジョバンニは泣きたいのを堪えて「さよなら」と言いました。そして、再び汽車が動きだす時には、半分以上の席が空っぽになっていたのです。
 また2人だけになった座席で、ジョバンニは改めてカンパネルラに「どこまでもどこまでも一緒に行こう」と言いました。カンパネルラも頷いてくれましたが、そのカンパネルラも、ジョバンニを置いて行ってしまったのです。ついに泣き出してしまったジョバンニの耳に、今まで不意に聞こえてきた声が、また聞こえてきたのです。

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