武田泰淳 『風媒花』 三十二

一 橋のほとり 三十二

「『峯は老子にはなれんですよ』と軍地は予言する。
『軍地も墨子にはなれんよ』と峯も予言した。老子は巧妙な韜晦(とうかい)者。或は徹底した宇宙主義者。墨子は果敢で質樸な実行者だ。どっちでも成りおおせたら、男子として申分ないだろう。」

ここ二一つの事本仏像系が行われています。峯は、巧妙な韜晦者、或は宇宙主義者。軍地は可換で質樸な実行者。これは相容れないものです。その二人が退治しているという状況は、読んでいてわくわくするものです。さて、次はどのように展開してゆくのか。

「『桂(クエイ)さんは先刻、中国文化を紹介すると言われましたが、』原一人が、先輩たちの置き去りにした中国人記者に喰い下がり、彼をいじくり廻している。」

高校教師の原にスポットライトが当たります。ぎろりと腹を睨んでいる武田泰淳の眼球が思い浮かびますが、それをしり目に、物語世界に没入します。

「……。やがて桂は起ち上がり、一人々々と握手する。
『どなたか方角の同じ方(かた)があれば、車にお乗せしますが』同乗を申出る者はいない。」

桂と火曜会のメンバーとの間には、分かち合えない一線があるようです。

Posted in 文学, 風媒花 | Tagged , , , | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください